仕事場へ行く前に、東京ステーションギャラリーの「鴨居玲 踊り候え」を見てきました。



ReyCamoy



鴨居玲は受験生に好まれる作家だと伺いましたが、例に漏れず私も高校時代に予備校の蔵書でこの作家を知り、それ以来暫く食い入るように図録を見、随筆などの関連書籍を読み漁りました。

バルデペーニャスに大根がないので日本から種を持って行ったら村の人たちがカブと交配させてしまい、しかもそれが定着してしまったといったような話や、また、愛犬チータが亡くなった際、動転したのか姉の羊子が駆けつけたときにはいつの間にか大穴を掘ってチータを埋葬し、その上に座り込んで大声で泣いていたという話も忘れ難く印象に残っています。

しかし実際の作品を見たことは数えるほどしかありませんでした。今回の展示で、手際よく重ねられた絵の具の色と質の美しさに改めて油画の魅力を感じさせられました。

作品数が多くかなり手狭な感じがしましたが、東京ステーションギャラリーならではの東京駅創建当時の古煉瓦が剥き出しになった壁に、どんと、しかしぼうっと浮かぶ「1982年 私」を眺め、重低音で鈍く響く電車の走行音に気づいたとき、鴨居玲作品とこの場所がとてもマッチしていると思いました。 

キャプションが非常にお節介で、「そこは鑑賞者が感じたり考えるところなのだから、どうか黙っていてくれ!」といらいらする場面が十回ほどあったのがちと残念でした。